事実より感情を聞く|聞き上手な人の処世術
本質
出来事を聞くだけでは事情が分かり、感情を聞いて初めて本人が分かる。
原理と解説
友人が「上司に企画を却下された」と話したとき、「どんな企画だったの?」「理由は何て言われた?」と事情ばかり聞くと、会話は整理されても相手自身には近づけない。出来事には日時や原因がある一方、それをどう受け止めたかは人によって違う。同じ失敗でも、悔しい人、恥ずかしい人、ほっとする人がいる。感情を聞かずに事実だけ追うと、その人固有の意味づけが抜け落ちる。 企画を却下された相手に「それ、かなり悔しかった?」と決めつけるより、「そのとき、どう感じた?」と一度だけ尋ねる。相手が「悔しいというより、力が抜けた感じ」と返したなら、「力が抜けたんだ」とその言葉を拾う。すると相手は訂正や補足をしながら、自分でも曖昧だった気持ちを話し始めやすい。聞き手が感情を当てにいくのではなく、本人の表現を受け取ることで、会話の焦点が出来事から本人へ移る。 話を深く聞きたい場面では、「何があったか」を十分に集めたかではなく、「本人にとって何だったのか」まで触れたかで判断するとよい。事実確認が続いたら、一度だけ感情への問いを挟む。そして返ってきた感情語は勝手に強めたり言い換えたりせず、そのまま返す。事情を理解したつもりになる前に、相手の受け止め方を確かめる。この順序を持つだけで、質問が尋問になりにくく、その人の話として聞けるようになる。