分かったふりをしない|聞き上手な人の処世術
本質
「分かった」は、理解を示す言葉であると同時に理解を止める言葉でもある。
原理と解説
相手が説明している途中で「うん、分かった」と返した瞬間、それまで出ていた細かな言葉が止まることがある。理解を示したつもりでも、その一言は「もう十分伝わった」という合図にもなる。人は自分の経験や知識に近い話ほど、空白を勝手に補って理解した気になりやすい。その結果、似ている部分だけで話を閉じ、相手が本当に伝えたかった違いを取り落とす。 友人が「最近、ゼミに行くのがしんどい」と話したとき、「人間関係で疲れてるんだね」と早くまとめれば、実際には研究が進まず居場所がない感覚に苦しんでいるのかもしれない。「しんどいのは、人と会うこと?それとも別の部分?」と聞けば、相手は違いを修正できる。分からない箇所を残したまま確認することで、こちらの解釈を相手の事情に合わせ直せる。 理解したと思った場面ほど、結論ではなく仮説として受け取る方がいい。「こういうこと?」と確かめ、違えば直してもらえばよい。早く分かることを示すより、分からない部分を一つ聞き返す方が、相手の話は先へ進む。聞くときの目的を「理解した人に見えること」から「意味に近づくこと」へ変えれば、「分かった」は会話を閉じる返事ではなく、確認のあとに置く言葉になる。