知らないふりをする|会話がうまい人の処世術
本質
知識を見せるより、相手に気持ちよく語らせる方が会話は弾む。
原理と解説
相手が好きな映画を語り始めた瞬間、「それ知ってる。監督の前作も見た」と先回りすると、話が急に短くなることがある。知識を示されると、相手は説明する必要がなくなり、同時に「どこまで知っている人なのか」を測りながら話す側へ回る。会話の主役が体験や感想から知識量の比較へ移るため、詳しいほど場を弾ませるとは限らない。知っていることを少し脇に置くと、相手は自分の言葉で話せる余地を持てる。 好きな店の話なら、「そこ有名だよね」で終わらせず、「何が一番好き?」と聞いてみる。同じ店を知っていても、料理なのか、店員とのやり取りなのか、学生時代の思い出なのかは本人にしか分からない。「あの店、夜の雰囲気がいいんだよ」と返ってきたら、そこから誰と行くのか、いつ知ったのかへ自然に話が伸びる。情報を知っていることと、その人が何を感じているかを知っていることは別物である。 これからは、知っている話題が出たときほど「自分も知っている」と示す前に、まだ聞いていない部分がないかを見る。完全な無知を演じる必要はなく、「名前は知ってるけど、詳しくは知らない」「行ったことはあるけど、そこまで見てなかった」と正直に余白を残せばいい。会話で優先するのは、知識を証明する機会ではなく、相手の中にある話を引き出せる機会である。説明役を一度渡すだけで、相手は話しやすくなる。